「香水」(著:パトリック・ジュースキント 訳:池内 紀 文春文庫)ネタばれ
映画「パフューム」の原作を読み終えた。
映画はかなり忠実に再現されているが、原作の主人公グルヌイユは映画より超人的であった。
映画ではグルヌイユが愛されるということが自分に欠けていることに気付き愕然とするが、原作では自分がどんなに匂いの天才であっても人はその匂いには感化されるが自分の力だということを人々に知らしめることができず、また、体臭がなく、並みの人間のように匂いに感化されない自分は結局何物でもなく、愛するにしろ憎むにしろ、人と心を通わせることもできないのだということにに愕然とするという感じの方が近い。
その点では映画の方が殺人者であるグルヌイユが人間として救いのないいわゆる「気の毒な人」という情をかきたてられるのであるが、小説は彼自身の視点であるので、グルヌイユに対して同情することはなく、匂いという存在の魅力とまた消えていくことの空しさを表しているようである。まさにタイトルどおりの「香水」が主人公の小説なのであった。